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2007,08,17, Friday
今回は前回書いた音楽に於ける「絶妙なバランス」の話を書きたいと思います。
今年「千の風になって」という曲が大ヒットしました。あるテノール歌手が昨年大晦日のNHK「紅白歌合戦」に出場してこの歌を歌ったことから一気に曲の知名度が上がり、今年はじめからCDが爆発的に売れ、先日のニュースでは遂に久々のミリオンセラーとなったという報道がありました。この曲は「お墓の中の人」が主人公というこれまでにない視点の歌詞が話題になったというような背景は十分に理解できますし、私としてはあの曲自体は(それほど好きな曲ってわけではありませんが)そんなに悪くはないと思っております。 しかし、数々競作されたこの曲の中で、あのテノール歌手のCDが大ヒットしたということに関して、私としてはいささか疑問に感じるのです。というか私、彼の歌う「千の風」は非常に苦手です。出来れば街の中でこれ以上流さないで欲しいと思うぐらい嫌い。 こんなことを書いたら「あんな感動的な歌をけなすなんて」と思う人も存在することでしょう。なんせ百万枚も売れた曲ですから、それだけ多くの人を感動させたというのは間違いではないのだと思います。 しかし私としては彼の「千の風になって」に感動した人には是非、「彼以外の」いろんなクラシック歌手のCDや或いはライブをどんどん耳に入れていっていただければと考えております。 なぜそんなことを書くのか?世の中には彼の歌よりもずっと感動できるクラシック(或いはクラシック歌手が録音したポップスも含めて)が数多くあるからです。そしてもう一つ、その作品を演奏していて、或いは聴いていて、本当にその曲にあった「絶妙のバランス」というものを感じ取ってもらいたいからです。 私は残念ながら彼の「千の風」からはそういう音楽にとってとっても大切なものを殆ど感じることが出来ません。一つに、残念ながら彼はクラシック歌手として全く上手いとは思いません。いや、世の中のたくさんの歌手の中には(それこそジャンルに関係なく)所謂「下手ウマ」な人も存在しますが(そういう人は最終的には「上手い」ということですから)、残念ながら彼は「ド下手」だと私は思っています。まずは日本語、特に「あ行」の発音が全くなっていません。そのために全体的にこもって聞こえてしまっています。あれでは「西洋かぶれした」歌い方にしか聞こえません。クラシックの歌手でも日本語の上手い人は上手いです。技術的な面としても彼の発声法は非常に平べったく、情感を感じません。 二つ目は、あのオペラ発声、オフマイクを基調とした発声法による「感動の強制」があの歌、「千の風になって」という歌自体に合わないのです。いや、私には「千の風になって」という歌自体があの発声法をひたすら拒んでいるように聞こえるのです。冒頭にも書いたとおり、あの歌はお墓の中の人、即ち死者の「心の叫び」です。「死者の心の叫び」ということはもっともっとおだやかなものでなければならないのです。 (ここで本当は歌詞を掲載したいところですが著作権関係もありますので、CDを持っていらっしゃる方は是非見直してください) 彼のそこら辺に響き渡るような歌い方は死んだ人が風になったのではなくて、「千の台風が来た」という風にしか聞こえません。別にそこら辺に響かなくても良いんです。勿論オフマイクの発声法である必要はありません。大きな声である必要もなければ、マイクを通した歌でもかまわない。例え蚊の鳴くような声であっても、いやそういう声の方がもしかしたら「そこに私はいません 眠ってなんかいません」ということが本当に心の中に伝わってくるかもしれないのです。少なくとも「ああいう曲だからこそ」曲が求めている「絶妙なバランス」をもっと感じて制作して欲しかったのは確かです。 あれが売れたのはまあ、彼が紅白歌合戦に出場できたことと(NHKが何故彼を選んだのか?経緯とかはよく分かりませんが)、何よりCD会社、ショップ、そしてマスコミを巻き込んだ一大宣伝が功を奏したのだと思います。しかし世の中で売れていて、一見「感動できそうな曲」であっても実はもっとよい物だって世の中にはたくさんあるのです。 まあとにかく今年一番の話題曲ですし、これは私の単なる思い込みだとは十分思っております。しかし音楽制作においての「バランス感覚」が如何に大事かということを私自身深く考えさせられた1曲になってしまったのは確かですね。
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| エッセイと言うかもしれないどーでも良い話 | 12:47 AM | comments (2) | trackback (1) | |








